ハゲタカとか

「地道な努力」よりも、はるかに人生を好転させる努力の仕方 - 分裂勘違い君劇場

珍しくfromdusktildawn氏のエントリに同調してしまった。私はあのエントリを「スキルアップよりも楽できる近道を探せ」とは読んでいない。「起業マインドを身に付けろ」と読んだ。from劇場をどう読むかは各人の勝手であるので、勝手な感想でも書いてみたい。

ところで、あのエントリのハゲタカ氏はどうやって壊れた機械を修理する技術を身に付けたのだろうか? その現実的な方法の一つは、技術を買うことである。優秀な技術者を雇えばいいのだ。

壊れている機械を探し、それを修理出来る技術者を雇い、修理した機械を売却するアテを探す。これは事業そのものだ。

例えばfromdusktildawn氏の言う「ハゲタカ」を「スティーブ・ジョブズ」に置き換えたらどうだろう。

Apple CEO ジョブズApple再建のためにしてきたことは、まさに30万で壊れた機械を買うというハゲタカそのものである。Appleに復帰したジョブズが優秀な技術者を率いて行った革命を今や知らないものはいないだろう。

  • Macintoshという「壊れて」売れないパソコンを「修理」し、iMacとして売った。
  • 違法ダウンロードによって「壊れて」いたネット音楽配信を「修理」してiTunes Storeを作った。

もっと言えば、機能不全を起こしていたApple社そのものを修理したとも言える。ジョブズ最大の功績は、エンジニアという歯車が上手く回転するようにAppleという機械を修理した事だ。今ではAppleは世界でも有数の優良企業となっている。


私は、「正しい努力」信仰が、ジョブズのような「近道を探す努力」を潰しているのではないかと考えている。

日本にはジョブズに最初の資金を与えてくれる銀行も、ベンチャー投資家もいないのだ。壊れた機械を買い取るリスクを背負うハゲタカをあざ笑う空気が日本にはないか?

日本では理系技術者が減ってきていると言う。また博士号を持ったワーキングプアが増えているという。壊れた機械を修理できる技術者を評価して使いこなすハゲタカが皆無なのではないか?

もちろんみんながジョブズを目指す必要などないし、多くの人間は地道な努力をしなければならないかもしれない。機械を修理できる優秀な技術者は必要だ。

しかし、ハゲタカをあざ笑う日本はジョブズのような人間を育てるにはあまりにも適してないのではないか、と思うのだ。地道な努力をしてきた人間に対して、その努力の成果を最大限発揮出来る場を与えられる人間があまりにも少ないのではないか、と思うのだ。努力して技術を身に付けた人間に「それとも俺と世界を変えてみないか」と言える人間が日本にどれだけいるだろう?