Winny作者の金子氏、TV番組でのインタビューに答える

Winny作者の金子氏のインタビューで、国益という言葉を強調する金子氏を見て思った事を書いてみる。

以前、P2P技術をビジネス向けのグループウェア等に応用できないか、なんてことを考えていた事がある。あまり真剣に取り組んでいなかったので結局モノにならなかったのだが、世界には同じようなことを考えている連中がごまんといて、既にいくつかビジネス向けに製品化されている。で、そんな製品はやはり自分が欲しいと思っていた機能が搭載されており会社への導入も提案したのだが、案の定却下。単にプレゼン能力に問題があったのかもしれないが、主にP2Pベースという理由でだ。IT企業でP2Pの認識がその程度であるからして、一般の企業での扱いなど推して知るべし。日本でP2Pをベースにした製品でビジネスを行う障害は思ったよりも大きいのではないかと感じた。

Winnyの問題点は二つあって、著作権侵害の幇助と個人情報の流出だ。前者はコンテンツビジネス業界以外にはまったく影響のない問題であって大事ではない。しかい個人情報問題はどの業界でも関係のある話で、社会に与えた影響はこちらの方が大きい。そして「P2P=情報をコントロールできない」というイメージを作り上げてしまったことが、WinnyP2P技術に残した最大の汚点であると思う。P2Pベースだからとって情報をコントロールできないということはないし、そもそも流出はWinnyではなく、ウィルスの問題なのだが、そんなことはユーザの知った事ではない。イメージの問題なのだ。

P2Pをベースとした分散協調型システムは多くの端末が並ぶオフィスにこそ向いているアーキテクチャであると信じている。そのようなアプリケーションはいずれ企業に浸透していくだろう。だが、Winny問題が残した爪痕によって、日本のP2P技術応用が遅れていく可能性は大いに考えられる。金子氏の言う国益は、P2P分野だけににとどまるものではなくソフトウェア全般を指しているものなのだが、その懸念は既に現実となりつつあるのではないかと思うのだ。