YouTubeで反捕鯨

オーストラリア政府、YouTubeで日本の子どもに反捕鯨キャンペーン 国際ニュース : AFPBB News

捕鯨そのものの是非には興味はなく、どっちでもいいと思っているが、捕鯨に関連した話題で2点ほど興味がある。

鯨の食害

鯨が水産資源を捕りまくって生態系を乱しているので間引けという主張はひいき目に見ても無理がある説なのだが、日本国内ではそれなりの支持を得ているように見える。誰が言い出したのか気になるものである。

まず本当に鯨が水産資源を食い尽くしているのか? 日本捕鯨研究所という捕鯨推進団体の調査結果によると、鯨の捕食量は全世界の漁獲量の5倍以上にもなるらしい。しかし、それが海洋の全資源においてどの程度のインパクトを与える量なのかという分析はない。この数値だけをもって生態系が…というには説得力が足りないであろう。我々はもっとサンマを食べるべきなのかもしれないのだ。そもそも人類という天敵がいなかった19世紀以前、鯨による捕食量は現在以上だったはずだが、当時の鯨が海洋生態系を破壊していたとは到底考えられない。

そしてその捕食量データが科学的に妥当であるかといえば、一方の立場にたった人間の言い値であって正直信憑性に対する疑問は否めない。もちろんグリーンピースの提出している値も同様である。数値データはそれ単体では必ずしも絶対ではなく、他者による追試が可能であって初めて意味があるものになる。両者のデータはともに正当な手続きに基づいて検証され合意に達しているとは言えず科学的根拠は非常に薄い。

また生態系は単純ではなく、捕食者を減らせば被捕食者が増えるのかといえば、そうではない。オオカミを絶滅させた結果、天敵が居なくなったはずのシカも絶滅という例がある。これはシカが無制限に増え山が回復不能のダメージを受け、結果シカが住めなくなったということなのだが、単純に捕食者を減らせば良いという単純なものではない。弱肉強食というのは捕食・被捕食の関係しか表さない。システム全体では捕食者・被捕食者は互いに利益を得ているのだ。

鯨が多すぎて生態系を破壊しているという立場には無理があるのだ。

捕鯨を推進して誰が得しているのか

そもそも零細産業にすぎない捕鯨などというもの国を挙げて推進するようなものだろうか。

仮に捕鯨オッケーという事になっても国際社会の締めつけがある以上、大量捕獲は難しく鯨による食料自給率アップはまず見込めないだろう。美味い牛肉に慣れ切った日本人の舌に鯨肉はちょっと厳しいものがある。万人受けするような味でもない。あれは貧しい時代を思い出すから嫌だ、ぐらいのことを言っている50〜60代もいる。その程度の味でしかない。また、捕鯨は文化だというのはタテマエに過ぎない。そんな下らない理由で政府組織が動くわけがないだろう。

何故国際社会で孤立するリスクを負ってまで捕鯨を推進するのか、それで誰が得をしているのかという点を想像するとなかなか興味深いかもしれない。