しかくいあたまをまるくする - 円周率

中学受験大手、日能研は電車の広告で中学受験の問題を掲載している。今月は円周率の問題だ。

ゴマの分布比率から正方形と円のおおよその面積比を求め、円の面積の公式から円周率を逆算すればよい。所詮中学入試、この程度のレベルの問題なら3分も必要ない。しかし、隣で同年代のサラリーマン3人組が悪戦苦闘しているようだった。

日本においては小学校3年生で円周率という概念を習う。以前、ゆとり教育の一環として円周率を3.14ではなく3と教えることが決定された時、学力低下が懸念された。しかし円周率という概念や本質の理解と、3や3.14といった円周率の近似値の間に関係はないのだ。

この問題の出題者は、

「3.14」という数値にこだわる前に、そもそも円周率とは何かということを考えてほしいですね。

と総評している。大切な事は本質的な概念の理解なのだ。

円の面積の公式は円周率が定義されて初めて導かれる公式。それゆえに、円の公式を使えうためには、前提として「円周率とは何か」理解していなければならない。公式さえ知っていれば円周率の概念を正しく理解してなくても問題は解ける。しかし、それは単なる数遊びにすぎず、本当の意味で問題を解いたということにはならない。

こんな問題を考えてみよう。

地球は巨大な球で、一周4万キロメートルある。地上にロープを這わせて一周すると長さは4万キロメートルになる。では、このロープを地上から1メートル浮かせて一周させるには、ロープは何メートル必要か? 

答えは約4万キロ+6メートル。地球は一周4万キロもあるので、たった1メートル浮かせただけでも物凄く長くなりそう、というイメージを持つかもしれないが、それは正しくない。どんな巨大な円でも極小の円でも、直径と円周の比はすべて同じ値となる。その値を円周率と定義する。小学校3年生の教科書に書かれていることだ。しかし、学力低下を嘆く大人たちでさえも本質を理解できている者は少ない。